軍事性暴力と踏みにじられた人権——いま沖縄で何が起きているのか

髙良沙哉(沖縄大学教授)
2025/04/04
米軍キャンプ・シュワブのフェンス沿いで手をつなぎ「人間の鎖」をつくる市民ら。2024年7月6日、沖縄県名護市辺野古。共同

 2023年12月、16歳未満の少女が米兵によって誘拐され、性的暴行を受ける事件が発生した。被害者は性交同意年齢にも達しない16歳未満であり、重大犯罪である。

 この事件に対する抗議と再発防止を求めて、市民主導で2024年12月22日、「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める沖縄県民大会」が開催された。事件発生から約1年後の開催であった。

 本稿では、本件に関連して行なわれた抗議行動や、米兵犯罪に関連する様々な問題点を整理し、沖縄において行なわれている一連の抗議行動を確認し、広く多くの人々と問題を解決すべく連帯する契機としたい。

1 半年も通報されなかった事件

 冒頭に述べた、米兵による(16歳未満の)少女誘拐・性的暴行事件は、人間の尊厳を踏みにじる軍事性暴力が再び発生したことと、事件が半年もの間、沖縄県に知らされていなかったという2つの衝撃と怒りがあった。

 報道によれば、被害少女は、事件発生直後に警察に110番通報していた。しかし、本件が「発覚」したのは、2024年6月に地元メディアの記者が公判日程を確認した際に偶然発見したからである(『沖縄タイムス』2025年1月9日)。従来であれば、事件の発生を米軍が把握した時点で、米軍から那覇防衛施設局経由で沖縄県と関係市町村には通報されるはずであった。また、加害米兵が起訴された3月には、外務省は本件について認識していたが、やはり外務省も3カ月間、沖縄県に通報していなかった。

 事件が沖縄県に通報されなかったことで、被害者は沖縄県のワンストップ支援センターの迅速な対応を受けられなかった可能性がある。また沖縄から米軍や日本政府に抗議し、再発防止を求めることもできなかった。事件が隠された6カ月の間に、沖縄県では他にも米兵による性暴力事件が発生していたのである。

 沖縄県に通報しなかった理由を、外務省報道官は「被害者のプライバシーの保護」のため、と説明した。しかし、プライバシーを保護しながら県に通報し必要な支援につなげることは可能であったはずである。被害者の被った不利益は大きい。結局、被害者保護を口実に、加害者を利することにつながってはいないだろうか。また本件では、捜査段階での被疑者の身柄引き渡し要求はなされず、被疑者である米兵は、基地内に身柄を置いたまま在宅での捜査がなされた。3月に起訴されたことで、加害米兵の身柄は一旦日本側に移ったが保釈された(『沖縄タイムス』2024年6月27日)。

 本件第一審で、被告人(米兵)は、性的行為を認めつつ、誘拐、不同意性交を否定し無罪を主張していたが、懲役5年の有罪判決が言い渡された(同、12月14日)。

2 事件から見える多くの問題点

①法廷の加害性

 第一審では、被害者は休憩を挟んで約5時間も証言に立った。被害者が明確に性的行為を拒否する意思を示したにもかかわらず暴行が継続されたことや、少女がジェスチャーを交えて年齢を被告人に伝えていたことも、裁判の中で明らかになった。事件後、被害者は自傷行為を繰り返しているという。

髙良沙哉

(たから・さちか)沖縄大学教授。1979年沖縄県生まれ。博士(学術)。専門は憲法学、ジェンダー。著書に『沖縄 軍事性暴力を生み出すものは何か――基地の偏在を問う』(影書房)、『「慰安婦」問題と戦時暴力――軍隊による性暴力の責任を問う』(法律文化社)。

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