【2025年8月号特集】これからの反核
米の日本核武装懸念
2016年6月20日、のちに大統領となるジョー・バイデン副大統領は米(公共放送)PBSのインタビュー番組で、「日本は事実上、一夜にして核爆弾を入手できる」と発言した。北朝鮮非核化のために米中連携が必要だという文脈での発言だ。失言癖で有名な同氏だが、この発言は、米国に昔からある日本の核武装懸念を表現したものとも言える。
核拡散に関する米国の最初期の包括的な政策レビュー「ギルパトリック報告書」(1965年)は、中国初の核実験(1964年10月)をうけて、日本とインドが核兵器保有に向かうと分析し、日本の核武装阻止のため、米国は日本への防衛コミットメントの再確認・強化、核兵器保有による国際地位上昇の代替策を提供すべき、と提言した。44年後、米戦略態勢議会委員会のジェイムズ・シュレシンジャー副委員長(元国防長官)は下院軍事委員会での同委員会最終報告書に関する公聴会(2009年5月6日)で「日本は、米国の核の傘の下にある三十数カ国の中で、最も独自核戦力を保有する可能性のある国であり、(米国の核態勢見直しには)日本との協議が不可欠」と発言した。
日本は1967年12月11日の国会で当時の佐藤栄作首相が「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まない」と表明して以来、非核三原則を国是としてきた。また様々な場面で「唯一の戦争被爆国」を掲げて核兵器廃絶を訴えてきた国だ。その日本をなぜ米国は懸念するのか。
それは、核兵器の材料になるプルトニウムと濃縮ウランの製造能力を日本が持っているからだ。そして、日本は今、国内外に44.5トンものプルトニウムを保有している。