統一教会解散命令は違憲か
東京地裁(鈴木謙也裁判長)は3月25日、文科省が2023年10月23日に請求した統一教会(通称。宗教法人世界平和統一家庭連合)への解散命令請求に対して、非公開の審理を経て、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(宗教法人法第81条1項1号)を根拠に、法人の解散を決定した。
文科省は請求に先立ち、7回にわたり質問(500項目)を教団に行ない(うち110問は回答せず)、調査した5000点の証拠を裁判所に提出した。前例であるオウム真理教(無差別大量殺人ほか、1996年)、明覚寺(「霊視商法」詐欺、2001年)は刑法違反が理由だったが、統一教会は初の民法の不法行為が理由である。「決定」はA4判用紙で116頁に及んだ。なお、統一教会は4月7日に東京高裁に解散命令を「不当」だとして即時抗告した。
本論をすすめるにあたり、前もって2点、申し置きたい。
ひとつは、文科省(国)が法人を解散させるにあたり、調査した対象は統一教会の四十数年にわたる「宗教活動」そのものだったという点である。統一教会の宗教活動は、一般的な宗教団体の活動のイメージとは隔絶した特異な態様を示す。それがどのように「公共の福祉を害」したのか。虚心坦懐に実態を凝視してほしい。
ふたつめは、今回の解散命令は統一教会が主張するように「宗教弾圧」であり信教の自由を侵害する憲法違反なのか、である。ここで言いたいのは、政教分離と不可分である旧来の「信教の自由」論では統一教会の主張に対応できないということだ。そもそも「正体隠し伝道」によって市民の「宗教選択の自由」を奪い、信教の自由を侵害したのは統一教会である。本質的には、教団と信者(市民)という「私人間」における「信教の自由」問題と捉えるべきなのである。カルト問題における「信教の自由」は、「新しい人権【注】」としての視座を確立しない限り、混乱に陥る。筆者は90年代後半、この問題に深く関わってきた郷路征記弁護士の「統一教会問題の本質は信教の自由の侵害」との意見が心に響き、それを「精神の自由」の問題と解釈しながら、以来、取材の中で考えつづけ、この結論に至った。
以上2点が、統一教会やオウム真理教、「霊視商法」などのカルトを30年間取材してきた筆者の思いである。