左派躍進の土壌
アメリカでは、ドナルド・トランプ大統領による独裁的な政治からの脱却をめざすうねりの中で、民主党左派が勢いを増している。予備選と言われる連邦議会や地方の統一選挙でも、歴史的に共和党の支持基盤となってきた自治体や州で勢力を反転させてきた。トランプ政権は選挙区を再編するなどして共和党に有利な状況を作ってきたものの、変革を求める声は草の根から湧き上がっている。
民主党左派と位置づけられるのは、民主社会主義を思想に持つ潮流で、高額の政治献金を提供する大企業や富裕層になびく政治を批判し、一般市民の生活向上と経済活動参画のための政治を追求する。2016年大統領選で、バーニー・サンダース上院議員が民主社会主義的な政策を掲げて立候補してから広く語られるようになり、支持者や賛同者が急増した。サンダース議員が支持したゾーラン・マムダニ氏は、アメリカ民主社会主義者(DSA)に属していることを公表し、2025年11月、ニューヨーク市長選に勝利した。
DSAは1982年に設立された政治団体だ。2015年に7000人に満たなかった会員数は、10年間で12万人を超すまでに膨れ上がった。会員でなくとも、サンダース議員のようにその思想に強く共鳴する人も多い。
その影響力はニューヨークだけに留まらない。トランプ王国と言われるフロリダ州でも、労働組合のオルガナイザーだったアンジー・ニクソンが現職民主党議員を予備選で破るなどして注目を集めた。その勝利は、ニクソン氏も会員であるDSAや労働組合などの土壌の上にある。ニクソン氏は、同じく民主社会主義を提唱して米議会史上初のムスリム女性議員として選出された、ミシガン州のラシダ・タリーブ氏やミネソタ州のイルハン・オマール氏などの支持を受けて11月の上院議員選挙に備えてきた。
こうして支持が強まっている民主社会主義的な社会運動を追うと、そこには労働組合の変革が見えてくる。
オキュパイから職場の組織化へ
トランプ氏を大統領に2度当選させたアメリカだが、共和党・民主党の主要二政党だけでは選択肢が狭いとの声が強まっていた。中道化した民主党は共和党とさほど変わらず、特権層の既得権益を優先する政治を進め、労働者や一般市民のための政党ではないと見られているからだ。
「市民はもうひとつの政治を求めている」――。アメリカの労働組合関係者から最近ひんぱんに聞くこの言葉。その受け皿となったのが、左派的な姿勢と政策を打ち出すDSAだったと言えるだろう。特に民主社会主義への支持が強まっている高学歴の若年層は、大学卒業とともに学生ローンの借金を背負い、就職難に加えて物価高騰にあえぐ。地価高騰の中ではマイホームを持つことも遠い夢。新自由主義の深まりに押しつぶされそうになっているのだ。DSAの若い政治活動家は、必要としている人のために制度が機能していないことが背景にあると言う。

