【変革のアメリカ】新世代左派はアメリカを変えられるか

三牧聖子(同志社大学大学院教授)
2026/11/06
接戦のミシガン州上院選で当選した民主党のアブドゥル・エルサイード氏(右)。自身のXより

「国民のための政治」はどこへ

 「ディープステート(闇の政府)を打ち砕き、国民によって国民のために運営される政治を復活させる」――2024年大統領選中、トランプは、政府は「腐敗した既得権益層」に乗っ取られてきたとして、その解体を繰り返し国民に約束した。2026年9月公表のギャラップ調査では、「政府に腐敗が広がっている」と回答したアメリカ人は89%に及ぶ(1)。トランプの訴えは、そうした根深い政治不信に響くものだった。

1          “Record-High 89% in U.S. Say Government Corruption Widespread,” Gallup, September 2, 2026.

 しかし、トランプが約束した「国民によって国民のために運営される政治」は実現したのだろうか。

 否、と言わざるを得ない。むしろ人々が目の当たりにしてきたのは、ごく少数の富裕層が、富と政治権力をさらに集中させていく姿であった。

 その構図は、2025年1月の大統領就任式から鮮明だった。実業家イーロン・マスクをはじめ、世界有数の富豪が勢ぞろいしたのだ。大統領選でトランプを巨額の資金で支えたマスクは、「政府効率化省(DOGE)」を主導し、連邦政府の人員や支出の削減に深く関わった。政府による規制や契約に大きな利害を持つ実業家が、政府をつくり替える側に立ったのである。

 海外への関与を見直し、国内重視の「アメリカ第一(ファースト)」を追求するという約束も裏切られた。2026年2月末、トランプはイスラエルとともにイランへの攻撃に踏み切った。短期の圧倒的勝利を誇示するはずの戦争は、終わりの見えない戦争となった。ホルムズ海峡をめぐる軍事的対立は、エネルギー供給と海上輸送を不安定にし、その影響はガソリン価格や物流費を通じて世界経済に広がり、アメリカの人々の生活へも跳ね返ってきた。

 こうした背景のもと、人々の生活苦の解決を真剣に追求する政党に民主党が生まれ変わることへの期待が高まっている。もっとも、トランプへの不満が、そのまま民主党への信頼につながるわけではない。11月の中間選挙で問われるのは、トランプ政治への賛否とともに、その政治に対抗する民主党がどのように変わるのかという問題である。

民主党を左から揺さぶる

 反トランプだけではだめだ、民主党が変わらなければだめだ――長年、この課題を民主党に突きつけてきたのが、民主社会主義者を自任するバーモント州選出の連邦上院議員、バーニー・サンダースである。無所属で活動しながら民主党と会派を組み、2016年と2020年には民主党の大統領候補指名を争った。サンダースは国民皆保険、公立大学の授業料無償化、労働者の権利の強化などを掲げ、富と政治権力の集中を批判した。大口献金者に頼らず、小口献金と草の根の参加によって選挙運動をつくることも、その政治の一部だった。

三牧聖子

(みまき・せいこ)1981年生まれ。同志社大学大学院准教授。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科博士課程修了。米ハーバード大学日米関係プログラム・アカデミックアソシエイト、高崎経済大学准教授などを経て現職。専門はアメリカ政治外交史、平和研究。著書に『戦争違法化運動の時代』(名古屋大学出版会)、『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書)、『自壊する欧米 ガザ危機が問うダブルスタンダード』(集英社新書)など。

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