未曾有の健康被害――新型コロナワクチン死亡認定1000人に

楊井人文(日本公共利益研究所主任研究員)
2025/04/04

45年間の被害総数を大きく上回る異常事態

 「ロックダウン」「ステイホーム」「不要不急」「ソーシャルディスタンス」……こうしたフレーズを覚えていない人はいないだろう。だが、ほとんどの人があの頃のことを頭の片隅に追いやっているのではないだろうか。

 そうした中に「ワクチン爆速で」「一日百万回接種」「思いやりワクチン」といったフレーズもあったことは覚えているだろうか。新型コロナワクチンはコロナ禍を抜け出すための鍵をにぎると期待された。使用されたのはメッセンジャーRNAワクチンというまったく新しいタイプ。1期目のトランプ米大統領が「ワープ・スピード作戦」として開発を急がせ、わずか半年で緊急使用許可が出された。

 日本でも2021年2月から接種が開始され、大半の約1億人が接種した。当初は「ファイザー製もモデルナ製も1年は持つ」(河野太郎コロナ担当大臣)とされ、2回接種で十分と説明されていた。だが、その後3回目、4回目と続き、日本人の総接種回数は4億回を超えた。その陰で、接種後に体調の異変が生じる人々が続出し、死亡例も増えたが、実態はいまだにほとんど知られていない。

 その重要な手がかりが国の健康被害救済制度だ。予防接種法にもとづき、国が勧める予防接種によって健康被害が生じた本人や遺族に、医療費、死亡一時金などの金銭補償を行なうもので、天然痘の予防接種(種痘)による健康被害をきっかけに法整備が行なわれた。1977年以来、インフルエンザや麻疹など数多くのワクチン接種が行なわれてきたが、健康被害が認定されたのは45年間で合計約3500人、うち151人が死亡事案であった。近年の認定件数は年間100件未満で推移し、死亡事案は5年間で計10人程度だったが、コロナワクチンだけで被害認定は約9000件に達し、死亡事案の認定も約1000人に上っている。過去45年間の認定総数をはるかに上回るという未曾有の事態が起きているのである。(図表1、図表2参照)

軽視された若年者の異常シグナル

 筆者は救済制度の審査結果をすべてデータベース化した。厚生労働省が公表しているのは性別・年齢・病名だけで、情報は極めて限られているが、簡単な分析は可能だ。例えば、データベースから「心筋炎・心膜炎」の被害認定事案を抽出したところ、506件あり、その3分の2にあたる330件が20代以下の男性だった(図表3参照)。

 「若年男性に心筋炎の副反応被害が多発している」という事実をどれだけの人が聞いたことがあるだろうか。当初、ワクチンの緊急承認時に説明されていた重大な副反応リスクは「アナフィラキシー」(接種直後に現れる重度のアレルギー反応)だけだったことを記憶している人は多いはずだ。

 ところが、接種が始まった後の2021年6月、それまで未知だった重大な副反応リスクが見つかる。若年男性の心筋炎発症例が予想を超えて多いと米疾病対策センター(CDC)が発表したのだ。心筋炎とは心臓の筋肉の炎症で、心不全や危険な不整脈の原因になる。スウェーデンなど北欧諸国では若年者の接種を一時停止する動きも出た。日本でも若年男性に異常な高頻度で心筋炎の副反応疑い報告が上がっていた(図表4参照)。初回接種が一巡し、3回目の「ブースター接種」開始前の同年12月には重大な副反応として心筋炎・心膜炎が正式に追記されたのである。

ここから有料記事

楊井人文

(やない・ひとふみ)ベリーベスト法律事務所弁護士。慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年に弁護士登録。ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人。共著『ファクトチェックとは何か』(尾崎行雄記念財団ブックオブザイヤー受賞)。

latest Issue

Don't Miss