「ファクトチェック」に偏見はなかったのか?

田島 輔 (弁護士)
2025/04/04

ファクトチェックを活用した「検閲」

 2025年1月7日、FacebookやInstagramを運営するMetaは、米国において誤情報対策にファクトチェックを活用する施策を終了することを発表した。

 その理由として挙げられていたのは、「ファクトチェッカーは、何をどのようにファクトチェックするかの選択について偏見があった。正当な言論がファクトチェックの対象となり、レッテル貼りや配信の削減が行なわれていた」というもの。Metaの施策では、ファクトチェックが「検閲」のように機能し、自由な言論を抑圧していた。

 さらに、MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、新型コロナウイルス関連の投稿について検閲するようにバイデン政権から圧力を受けていたことも明らかにしている(2024年8月28日、NHK「メタCEO バイデン政権を批判『コロナ情報を検閲するよう圧力』」)。

 このように、米国では、SNS上で流通する情報について、プラットフォーマーが政府から圧力を受けており、「検閲」の手段としてファクトチェックが活用されていた。

新型コロナワクチン広報プロジェクト

 実は、そうした動きが出ているのは米国だけではない。日本でも、新型コロナワクチン関連の政府による誤情報対策に、ファクトチェックが活用されていた。

 新型コロナワクチン接種開始直前の2021年2月16日、厚生労働省は大手PR会社と契約して、「新型コロナウイルス感染症のワクチン広報プロジェクト」を開始した。広報プロジェクトの仕様書には、その目的について次のような記載がある。

新型コロナウイルス感染症のワクチン広報プロジェクトの仕様書

 「新型コロナワクチンについて、迅速・丁寧な情報発信を行い、正しい情報に基づいて、国民に安心してワクチンを接種してもらうための世論形成を行い、定量的な国内の新型コロナワクチン接種数の増加を目指す」

 そして、広報プロジェクトの具体的な内容として、SNSやメディアで発信される誤情報についてのモニタリング、誤情報に対するファクトチェックと情報発信、非科学的な内容を報じたメディアとの面談等が予定されていた。

 日本でも、新型コロナワクチンに関する誤情報対策としてファクトチェックが活用され、SNSやメディアへの圧力があった可能性があるということだ。

 筆者は、ワクチン広報プロジェクトの具体的な実施内容について情報公開請求を行なったものの、開示された業務報告書は全面的に黒塗りであった(写真)。そのため、広報プロジェクトがSNSやメディアでの情報流通にどのような影響をもっていたのかはまったくわからない。

「新型コロナウイルス感染症のワクチン広報プロジェクト」の報告書は完全な黒塗り=筆者提供。

田島 輔

(たじま・たすく)弁護士、NPOメディア「InFact」チーフ・エディター(ファクトチェック担当)。ファクトチェックアワード2023・2024優秀賞受賞。

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