増え続ける組織的襲撃
8月中旬、ヨルダン川西岸地区のナーブルス近郊クスラでユダヤ人入植者がパレスチナ人の住宅3棟を包囲し、電気や水道を数日にわたって遮断しつづけているというニュースが流れた。イスラエル寄りの姿勢で知られる米国のハッカビー駐イスラエル大使さえ「恐るべきテロ行為」と非難し、イスラエル警察の介入を要請したと述べたことで、AP配信のこのニュースは日本のメディアでも報道された。
だが、真の恐ろしさはこれに留まらない。国連人道問題調整事務所(OCHA)のデータによれば、2025年1月から今年6月までに、入植者による対パレスチナ人襲撃は3033件記録されている。すでに今年上半期で約1200件となっており、これは過去最多を記録した昨年の同時期の記録を優に20%以上も上回る数字だ。
ガザでのジェノサイドに国際社会の注目が集まる一方で、西岸では「静かに」ナクバが続いていると言われる。だが静かなのは国際社会の反応だけだ。ジェニーンやトゥルカレムなどの難民キャンプではイスラエル軍が断続的に侵攻し、住民が追放されつづけているのに加え、比較的小さな村や集落で、入植者による組織的襲撃が続いている。2024年8月には、カルキリヤ北東部ジェト村に100人以上の覆面の入植者が夜間襲撃を仕掛け、住民に催涙ガスを浴びせ、家屋や車に放火した。ベツレヘム南部のベイト・ファッジャールでは2025年10月、入植者が棒や石、犬を使ってパレスチナ人を襲撃した。今年7月にはヘブロン近郊のハルフールで、手間をかけて育てられた収穫間際のブドウが数トン焼き払われた。特定の事例を挙げるのがフェアではないと感じさせるほどあちこちで、家屋侵入や家財の破壊、畑や果樹園、倉庫、水源、モスクの荒らし行為や放火、羊やヤギなどの家畜の窃盗や毒殺等々、許しがたい犯罪行為の数々が続けられている。
入植者暴力は決して新しい話ではない。80年代以降の入植運動の拡大のなか、1993年のオスロ合意翌年には、ヘブロンに住む医師がイブラーヒーム・モスクで銃を乱射し、29人のパレスチナ人を殺害した。90年代以降、入植者による銃撃や暴行は何度もあった。しかし今起きているのは、村や集落を計画的・組織的に襲い、そのコミュニティを消滅に導くという露骨な民族浄化である。こうした行為の多くが、「自治区」と言われながら警察権も行政権もパレスチナ人の手にはない(したがって自治など存在しない)C地区という、きわめて脆弱な状態に置かれたコミュニティで起きている。入植者は法的には民間人であるが、多くは兵役経験者であり、休暇中あるいは職務中に権限を乱用している入植者兵士も、彼らの隊伍には含まれるのである。
